7章 旋律の機能と構造
テクスチャー......譜面上の、垂直・水平方向の音響がある2次元的な音の並び。
ピアノロールに書かれた譜面をイメージしてもらえれば分かりやすいと思います。
旋律......一貫した音のつながりとして聴かれる音のグループ
主題......楽曲の中になんども現れ、楽曲の一部をなす音のつながり。ほとんどの場合は旋律だが、旋律でない主題もある。
旋律の種類
主旋律......最も強調される旋律。テクスチャーの最上部(ソプラノ)が主旋律として聴かれがちである。
対旋律......リズム的かつ旋律的に、主旋律と対比された旋律。
付随声部......3度や6度で主旋律に随伴する。テクスチャーを埋めたり、和声的な重みを加える。
定旋律......等間隔の音符による主題。宗教音楽に見られる。
歌謡的旋律......リズムと音程のはっきりした旋律。最後のフレーズを超えるような継続を暗示しない。
交響的旋律......大規模な作品で主題として使えるように計画された旋律。
オスティナート......何度も反復される旋律。普通は2音の交代のように、短くて単純である。
連結的または装飾的旋律......滑らかな動きで、際立った音をつなぐ。明らかに主題ではない。
旋律の形状
旋律は、方向の変化、音域、高点と低点によって特徴づけられる。
限られた音域に収まっていて、高点と低点を持っている旋律は優れている。
大多数の旋律は上行-下行の流れを好むが、下行-上行、また両者が混合した流れも多く見られる。
旋律の始点は表拍の出現によって測られるが、その前に裏拍で短い前振りが先行することもある。
動機
主題のように反復されたり変形されたりする。何度もくりかえし現れ、それと認識できる。
主題と違って独立的ではなく、旋律の一部として現れる。
非常に短く、単一の音でさえありうる。短い動機ほど、柔軟に用いることができる。
修飾音型......主旋律に対して伴奏的もしくは副次的である動機。
フレーズ
定型詩に於ける行のようなもので、通常は4小節か8小節である。
カデンツ......フレーズの最後。句読点、あるいは息継ぎのような役割を持つ。
2つのフレーズが補完し合ったり、それに応答し合ったりする時、その2つを前楽節、後楽節と呼ぶ。
多声的な旋律(分析的還元については省きます)
音の連なりが全て旋律的だとは限らない。和音構成音の分散(アルペジオ)を旋律として聴かないことは明らかである。
複合線......2つの声部が複雑に関わり合っていて、一つの旋律を暗示するもの。
旋律の変奏
装飾......ある旋律に、もとの輪郭が識別できる範囲で音を付け加えること。
旋律分析への手引き
具体的な方法
カデンツを含むフレーズの境界を調べる
フレーズ初めの表拍を調べる
頻出するリズムパターンと音程パターンを見つけ、和声変化との相関関係を考える
旋律の高点と低点は、和声変化と関係していることが多い
旋律分析から得られるもの
旋律の構造は、曲全体との関係においてはっきりと知ることができる。
しかし、旋律だけを調べて分かるような構造の特質もあるので、それを認識することは重要である。
旋律は音楽的な要素の中で作曲の方法論が最も詰まっている部分である。したがって、作曲家の個性的なひらめきがそこで明らかになる。